KeithKH

法廷遊戯のKeithKHのレビュー・感想・評価

法廷遊戯(2023年製作の映画)
4.0
非常に緻密に組み立てられた見応えのある傑作ミステリーです。

冒頭、ロースクールでの“無辜ゲーム”なる軽薄で子供じみた遊びが始まり、タイトルのゲーム・アニメめいた響きもあって、サブカルの際物映画という印象を抱きつつ、やや斜に構えて観始めました。
ところが、ストーリーが進むにつれ、ジグソーパズルのピースが、様々な場所で少しずつ嵌っていくような感覚に覆われていき、徐々に一級のミステリードラマだという思いが強まっていきました。

人物は、永瀬廉扮する久我清義、北村匠海扮する結城馨、杉咲花扮する織本美鈴の3人にほぼ絞り込まれ、3人の過去と現在が時制を行き来してテンポ良く次々展開していき、従い非常に濃密な物語に仕上がっています。カメラの視点は久我の目線であり、観客はいつの間にか久我に感情移入してスクリーンに惹き込まれていきます。
台詞が非常に少なく、効果音や効果音のような鈍重なBGMだけが被せられるという、重苦しい空気感の中で、ラストまで短いカットが小刻みに組み上げられていきます。而も手持ちカメラが多用されるため映像が頻りに揺れており、観客には一層の不安感と焦燥感を募らせます。

3人の過去が曝け出されるにつれ、事件の全体像が徐々に明らかになっていき、却って謎が謎を呼び、そして更なるどんでん返しがあって事件の真相が明らかになる、ここまでを97分に手際よくまとめ上げられていますので、中身の濃さに堪能しつつ、ラストで得られる満足感はひとしおでした。
法律家たちによる極めてドライに、ロジカルでスマートにストーリーが進んでいるように感じながら、憎悪と悔恨と悲哀という、実は極めて人間的で情緒豊かな物語であることに気づかされました。

とにかく無駄なカット、無駄な台詞が全くない、完成度の高い極上のエンターテインメント作品といえます。

それにしても永瀬廉の、深い哀感を湛えた眼差しには、終始吸い込まれそうな感覚を憶えました。
KeithKH

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