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ミッシングのmaroのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.0
2024年日本公開映画で面白かった順位:18/58
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

我が子が突然行方不明になったとき、自分だったらどうなってしまうか。
そんなことを考えさせられる映画だった。
ちなみに、これは犯人を捜す話でも、事件解決を追う話でもなく、愛する者がいなくなったときの残された人々の生き方を描いた作品なので、とても重い内容な上にモヤモヤしまくる。
子供がいる方は覚悟を持って観た方がいいかも。

この映画はとにかく石原さとみの演技に圧倒される。
いなくなった我が子の情報を少しでも集めようと駅でビラ配りを行い、事件を取り扱ってくれる番組の記者に頼る日々。
状況が進展しないまま時間だけが過ぎていくことに焦ると同時に、SNSでの誹謗中傷に苛立ちを募らせている。
だから、精神状態は常に不安定で、相手のちょっとした言動に怒り、デマだろうが何だろうが娘に関する情報が入ると、炎天下の砂漠で水を求めるかの如く食らいつく。
本当に心に一切の余裕がない極限状態に陥った人間そのもの。
非協力的な弟にキレ散らかすシーンや、娘が見つかったというデマ情報に踊らされて精神が崩壊してしまったシーンはとりわけ強烈なインパクトだった。
これ何が辛いって、娘が生きているか死んでいるかもわからず、単に行方不明っていうところよ。
比較の対象にならないけど、LINEやメールのレスも、ダメならダメでそう返してくれればいいのに、ノーレスだと不安になるじゃない。
この「どうなっているのかわからない」っていう状況が精神を蝕んでいくんだよね。。。

でも、人の感情の出方って様々だなと思えるのもこの映画のポイント。
確かに石原さとみの演技はすごかったんだけど、個人的には夫役の青木崇高の方が難しい役どころだったんじゃないかって思う。
彼は決して取り乱さず、常に冷静で淡々としていた。
妻からすると「温度差があるよね」と癪に障る部分でもあるんだけど、辛いのは当然夫もいっしょ。
その証拠に、ホテルの外でタバコを吸っているときに娘と同い年ぐらいの女の子を見て、目を真っ赤して懸命に涙をこらえてるんだよ。
夫婦そろって取り乱してもいいことないから、あえて爆発しそうな気持ちを抑えて一歩引いた立場にいるんだろう。
できた人間だ。

あと、記者役の中村倫也もよかった。
彼は視聴率を狙う局の方針よりも、当事者の気持ちを第一に考える優しい人物。
なんだけど、スクープを連発して社内表彰されるだけでなく、キー局への転職が決まった後輩の活躍に思うところがある様子。
夫婦に寄り添う姿勢はものすごく大事なんだけど、やっぱり心のどこかでは華々しく活躍したい気持ちもあるんだろう。
言葉では後輩の実力を認めるし、「勝ち負けとかそういう話じゃない」っていうような態度をするんだけど、きっと負け惜しみ。
彼の報道姿勢は人としては正しいけど、キャリアとしては必ずしも正解ではないので、そこのミスマッチが大きいのではと思った。
そのモヤり、すごく共感できたけど(笑)

そんなわけで、娘の失踪を通じて人間の在り方を描いたとても見ごたえのあるヒューマンドラマだった。
非常に重い内容だけど、その分面白いというか心に刻み込まれる映画なのでオススメ。
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