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ミッシングのVisorRobotのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

TOHOシネマズ仙台で見た。吉田恵輔監督作品は好きで、『麦子さんと』『ヒメアノ~ル』『犬猿』『空白』『愛しのアイリーン』『BLUE』『神は見返りを求める』は見ている。
(『さんかく』とか『つくえのなかみ』みてないんかよ)

この中で順位をつけるとしたら、『愛しのアイリーン』>『BLUE』>『ヒメアノ~ル』>『犬猿』>『空白』>『麦子さんと』>『神は見返りを求める』。俺が社会性のない男の物語に自分をぐっと入れていて、吉田監督の意地悪な面にはさして興味がないことが分かる。『犬猿』OPのすわ、Web広告かとだましてくるような仕掛けは大好きだ。

本作にも期待して足を運んだ。本作のバジェットというか、宣伝費を押し上げた要因として石原さとみ主演&新境地というのがあると思うが、そもそも彼女のことはよく知らず、その点も「石原さとみは自分の作品に合わないんじゃないかと思って断っていた」という吉田監督談(YouTubeチャンネルジャガモンド斎藤の余計なおセワで話していた)にシンパシー。ただ、最近綾野剛にドはまりし、『MIU』にもはまった嫁班に追従するように『アンナチュラル』『恋はDEEPに』の1話を見て、普通に演技うまいんだな、とおみそれしやした状態ではあった。

さて、本作だが、方々でいわれている通りしんどい話である。娘を失った親の後悔と悲劇によって崩壊しかかった家庭がテーマという点では『空白』に通じる(茶化して三部作構想を語っていたらコロナで時間ができて『missing』の脚本が出来上がったという吉田監督談(byジャガモンド~)も納得)。

起承転結の「承」が、それもいやーな「承」がずっと続くような映画なのであんま面白いとかそういう話ではない。おれたち観客は「みゆちゃん早くみつかってくれ」と願うが、同時に「みつかるわけないよ」という諦念を抱いて、映画の結末を待つ。それは、本作にて「今後も続くあの人たちの苦しみに寄り添っていくしかない」と話す中村倫也演じる砂田とシンクロする。このセリフからも、監督が巧妙に観客の心理をコントロールしていることが分かる。うまい、うまい。

・車の中で弟の謝罪を聴いた直後、事件のきっかけ、トラウマの原因ともいえるボーカルグループ(BLANK?だっけ)の曲がかかるシーン
・自宅の壁にプリズム効果で生まれた虹の影絵で、沙織里がわが子に触れるシーン
・警察署におとずれた沙織里がショックのあまり失禁してしまうシーン

映画の中で後々も思い出すようなシーンを三つもつくれているだけでもやっぱり吉田恵輔、半端ないなと思う。『空白』でいう娘の「絵」が見つかるシーン級が三つも。

ただ、結論としてはしんどい映画だったなになってしまうかもしれない。このテーマ性に「転」を持ち込むとすべてが瓦解してしまうリスクが高すぎるのはわかる。わかるが、たとえば片山慎三『さがす』(唇を震わせるクセが親子の絆を示す鍵となっている点で本作と共通する)には転があり、しんどい映画ながら最終的に残ったラベリングは「面白い映画」だったんだよな。

もちろん、その分テーマ性とか癒しとかはなくなってしまうし、題材がリアルな分本作に物語的な面白さを入れると「不謹慎」になってしまうんだろうけど。とはいえ、『パラサイト』を筆頭に韓国のグローバル作品ではエンタメと重さを両立させることに成功していると見受けられるので、日本の大エースたる吉田監督にもその領域にチャレンジしてほしいものだ、とも思う。
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