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ネクスト・ゴール・ウィンズのはたのレビュー・感想・評価

3.3
タイカ・ワイティティ初の実話モノで、マイノリティや他者に寛容であろうとする彼の視点が活かされていた。

だが、ギャグがあまりに多すぎて、元となった出来事の奇妙さを表現しきれていないのがペナルティ。サーチライトピクチャーズが制作・配給する作品には特徴があって、「家庭崩壊気味の家族」「孤立している主人公」「マイノリティ」が、よく出てくる。この映画はそれらの要素をしっかり満たしているので、ギャグ以外の個所はあからさまに創作しているなと思ったが、ほとんどそうではなかったのが驚きだった。ネタバレになるので詳しく書けないが、その部分を、もっとうまく’’関連させて’’書けたら、もっとドラマ性のある映画になっていたと思う。とは言っても、ワイティティがこの映画のドラマ面を高めようとした努力は、ジャイヤとトーマスのくだりがやけに多いところに見て取れる。ジャイヤがクローズアップされるのは、彼女がサッカー選手として特別だから、第三の性を持っているからと言うだけではない。内容を理解してから見ないと、このつながりに気づけないのが残念なところだ。

ところで、タイカ・ワイティティは妙にリドリー・スコットと縁のある映画監督である。「ソー:ラブ&サンダー」で神を殺す悪役を演じさせられたクリスチャン・ベールは「エクソダス:神と王」で預言者モーゼを演じている。ゼウス役は、「グラディエーター」「アメリカン・ギャングスター」等で度々主演を演じているラッセル・クロウだ。「ジョジョラビット」で主人公ジョジョが顔に負う傷は、「ブレードランナー」でロイが負う傷に似ている。そして、今回の映画では「悪の法則」や「プロメテウス」等に出演しているマイケル・ファスベンダーが主役を演じている。
ファスベンダーはブチ切れ演技でコメディとしての役割に徹しているが、ポップスが流れる中、コミカルに暴れまわる彼の姿は「オデッセイ」のマット・デイモンを想起せずにはいられなかった。これは、自分の思い過ごしなのだろうか?
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