カステラ

ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語のカステラのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

意外と物語映画にナレーションを持ち込むのは難しいのかもしれない。
邦画(例えば『南極料理人』)ではすんなり観れたが、外国製の映画でひたすら字幕で読むと混乱して飽きてしまうかもしれない。実話ベースの小説のアダプテーションしているという点でも似ている(ダールの方はそれに似せた架空の話だろうが)。
ウェスアンダーソンはほぼ全ての場面にナレーターを配置して、観客を読者へおも変えようと試みているかのよう。
観客でもあり読者(聞き手)ともなった受け手。
ヘンリーシュガーの伝記(おそらく創作の話)を聞いた話として語るロアルド・ダールが組み込まれたダールによる小説を元にした映画の中でレイフ・ファインズによるダールが語るヘンリー・シュガーを演じるベネディクト・カンバーバッチは最後にヘンリー・シュガーの変装を担当していたメイキャップアーティストとして登場する。ここにはヘンリー・シュガーは初めから居なかった。すでに亡くなっていたから。これは架空の話であり、それを元にした物語映画であり、ここにヘンリー・シュガーがいないのは当たり前である。が、ヘンリー・シュガーを描き切らないこれらの入れ子構造は(存在しないはずの)ヘンリー・シュガーの輪郭を克明に描き出している。
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