しの

HOW TO BLOW UPのしののレビュー・感想・評価

HOW TO BLOW UP(2022年製作の映画)
3.4
8人の男女が石油パイプラインの爆破を実行する様を、各人物の背景を織り交ぜつつ描いていくという構成を愚直に守るので若干タルいが、サスペンス的に作用するよう工夫されているし、終盤はツイストもある。面白くしすぎるとそれはそれで危険な題材をなんとか調理しましたという感じ。

実行犯が「格好よく」映るのはファーストショットのみで、あの後ろ姿は犯罪映画の文法でなかなか画になっているのだが、そこがピーク。以降は、素人集団だからこその地味なピンチやスリルが描かれる。つまり、むしろ対象を神格化しないようにドライな距離感をとっているといえる。

また、各人物の過去パートの挟み方も、そういえばこの人まだ紹介されてなかったなとか、この人が意外とこういう立ち回りしていたのかとか、それ自体がある種の仕掛けにはなっている。ここから浮かび上がるのは、実行犯もまた一枚岩ではなく、私欲と使命感は地続きなのだということだ。つまり、それぞれに大義を抱えた人々だったんですよ、という描き方もしていない。ある人はこの計画自体を利用するわけだし、ある意味この計画に巻き込まれた人物もいる。ここも本作のドライな視点だろう。人はある日突然「大義」に目覚めるわけではない。そこには個人と社会の関連がある。

アナログな時代設定だけでなく、このインディ映画らしい手作り感が作品に生々しさを与えていて、その意味では表現方法と題材がマッチしているし、センシティブな題材を面白く、しかし面白くなり過ぎずに描くバランスも成立させている。結果、その器用さの方が印象に残る感じはしてしまうが、試みは良かった。
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