サンヨンイチ

首のサンヨンイチのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.7
アウトレイジを思わせる予告は
詐欺まがいの偽物で正に影武者。
男色を中心とした有象無象の
戦国武将たちの人間模様は
時に血生臭く、
時に色めかしく、
時に喜劇が如く馬鹿馬鹿しい。
一つパーツが変われば
悲劇にも喜劇にもなると言わんばかりに
すぐにテンションの変わるトンデモ戦国時代は
時代考証の優れた時代劇よりも
リアルな「人」を描いているように思える。
笑いと残虐性が同居するこの世界観は
息継ぎをするには酸素が少し足りない。
意識が朦朧とする目まぐるしさに
顔を歪めながらも、
目眩とも、酔いとも言える
一種の気持ち良さに
いとも容易く溺れてしまった。

箍の外れたような加瀬亮の猛獣ぶりは
時代と作品を掻き回す名演であり、
本能寺での顛末は
どんでん返しとでも形容したくなるような
呆気なさで笑える。