サンヨンイチ

落下の解剖学のサンヨンイチのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.4
人里離れた趣ある民家に暮らす家族。
余裕ある佇まいの妻と教師の夫、
何やら風情なライフスタイルが確立されているようであるが
そんな好意的な印象は
裁判で明かされる証言によって
脆くも落下していく。

曖昧な真相も、
どんでん返しのない展開も、
この映画がミステリーではないことを物語っている。

証言はあくまで証言の域を越えず、
事象の解剖によって得られた“事実”は極めて少ない。
精確な表現ではないかもしれないが
状況証拠というものを作り出す要素が
改めて多すぎることに気づかされる。
弁護士との関係性、性生活、ジェンダー…。
産み出された状況証拠は
事実なのか、似て非なるものなのか。
その事実性に疑問を持とうとも、
疑問を抱かずに済む解釈こそが求められる
探究の佳作。