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首のiiのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
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人間くたばれば尸。首なんて1両の価値もない唯の物質たるものになるのである。突発的な死がある故、生が輝くようにみえる北野武の死生観。映画で何度も自らを葬ってきたビートたけし/北野武が描く戦国時代が面白くないわけがないだろう。これは大河ドラマではないのだ。史実から北野武が取捨選択した泥臭い戦国映画がここにある。インタビューでも語っていたが大河ドラマのように武将を英雄視しないし、当時あったであろう男色も随所に色濃く残る。
「戦国武将なんて悪い奴に決まってんだよ」と氏は語ったがその通りであろう。庶民から税収し城に暮らす彼らがまともなわけないのだ、皆狂ってる。恨み妬み嫉み、憎愛、裏切りが巧みに肉厚に描かれる。
北野映画には必ず、思わず息を呑む美しいカットがあると思うのだが、今回では水責めされ、降伏した城主が船の上で割腹するシーンであろう。生々しい戦いの後、飛び散った血だらけの塊を一掃するようなキタノブルー。
忍者の会合であった狂った踊りも良かった。自らが早く死ねるように奉り、踊る。ホドロフスキーのような世界。
友人の結婚式の前に友達と観たのだが結婚式の前に観るべきではない映画であったことは間違いない。
武さんの作品あと何本観れるかな…長生きしてください
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