ぽん

PERFECT DAYSのぽんのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.2
最後に流れるニーナ・シモンのfeeling goodがこの映画の全てを語っているかなぁ。
「新しい夜明け 新しい1日 新しい人生 とてもいい気分・・・」

トイレ清掃員のおじさんが淡々と日々を過ごしているドキュメンタリーのような映画で、一見、判で押したような繰り返しの毎日に見えるがそうじゃない。全く同じ瞬間なんてこの世に存在しない、木漏れ日のきらめきは一瞬一瞬がそのとき限りのもの、そんな奇跡に日々気づいてそれを愛でながら過ごせたら人生は素晴らしいじゃないか。そんなメッセージ。

自分は単純な人間なのでこういう作品が素直に好き。現実世界に打ちのめされてばかりいるから、せめてフィクションでは美しいキレイごとを味わいたいと思う。

手鏡を使って洗面台の下の奥まで汚れを確認する平山(役所広司)。彼と一緒に働くタカシ(柄本時生)が「平山さんはやり過ぎなんですよー。どうせ汚れるのに」って言うのだけど、これって生き方の問題だよなって思う。人間はどうせ死ぬんだからって好き勝手に雑に生きるのか。それとも明日をも知れぬ命であっても今日の一日を全力で生きるのか。
「たとえ明日、世界が滅亡しようとも今日わたしはリンゴの苗木を植えるだろう」というマルチン・ルターの名言がありますが、己もかくありたいと願う訳です。出来る出来ないは別にして。(えっ)

口数が少なく、他人に対してはいつも薄く微笑んで、困っている人がいれば助けてあげる平山という男は、宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」を思い起こさせる人物。いいじゃないですか。

世の中にはキレイごとが必要だと思っている。そういうのを冷笑して逆張りする方が賢そうに見えても、自分は褒められもせず、苦にもされない、でくのぼうがいい。
ぽん

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