「トイレ清掃の男の日々を淡々だが美しも描く」
渋谷区が手掛ける見たことのないデザイン性の高いトイレを作るThe Tokyo Toiletのプロジェクトをプロモーションする短編の企画から長編映画に仕上げた作品ながらカンヌ映画祭では主演男優賞を獲得したりと海外からも評価をされるヴィム・ベンダース監督作。
トイレ掃除をする中年男性の日常を淡々と描くのがメインで大きな起承転結はないながらも、無口な主人公平山（役所広司）の演技が素晴らしい。
感情が露わになる演技よりも一見感情に乏しい中での演技の方がより難しいと感じさせる細かい変化で感情を表現しているのが凄い。
セリフが少ない分、平山がどんな人間で何を考え、どう生きてきたかなども彼の佇まい、動きや生活の仕方で想像していくのも実に映画的。
そして海外の監督が撮ったとは思えないほど現代の日本の風景を切り取っており、サイバーパンク寄りなカッコいい日本ではない。自分たちが生活している延長線上の東京がしっかりと描かれてました。特に平山が住んでいる地域が自分の地元とも近いのでより身近で親近感が沸き、どこかすぐ隣で同じように暮らしていそうな現実感も感じました。
ストーリーはないので人によっては退屈かもしれませんが、静かな中にも人間の生活や生き方が詰まった素晴らしい作品でした。
