小麦番長

PERFECT DAYSの小麦番長のネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【繰り返しで生まれる変化】

去年、80歳超えのバーホーベン監督作品「ベネデッタ」を観てそのパワフルさに加齢なんてクソくらえ、と元気づけられたのに対し、本作は音楽のチョイスや映像に監督の「老い」を感じてしまった。(使われてる曲自体は全般に好き。使い方が‥‥)

後半の妹との描写から主人公平山は「あえて」あの生活を選んでいるとわかる。
以前から芸術や文芸を嗜むことのできる文化人であったのだろうから、平山の音楽のチョイスや読書家であるって設定は「有り得なくはない」としましょう。

けど肝心の?トイレ!!
綺麗すぎる。綺麗と言うかオシャレ過ぎる。
この違和感を調べたらどうやらユニクロ社長の取り組みらしい。
ほう、こうくるか、ってボロアパート描写からの→オシャレトイレだと、ボロアパートもトイレ清掃員の設定も意味を成さなくなってしまう。

「毎日は同じでない」を伝えるのに、朝自販機で缶コーヒー買う画角が徐々に変わってくるのとかは面白かった。

“影は重なったら濃くなるはず”
主人公平山さんは変化を避けているのではない。
傍目には繰り返しに見える日々の積み重ねは、僅かであっても必ず何らかの変化を生み出す。気づけるか、もしくは気づこうとしないかは本人の問題で。

‥‥って、伝えたい事はなんとなくわかるのだけど。
諸々。鼻についてしまって。

「THE TOKYO TOILET」プロジェクト
自体は面白い取り組みだと思うけど、映画制作そのものは電通案件かと知ると。
湧出する“なんちゃってミニマリスト”向けのマーケティングされた作品なんじゃないか、と。
鼻白んでしまう自分に納得。

せっかくの役所広司さんの演技も。あーーなんか勿体ないと言うか。
もっと良い演技できる俳優さんなのに〜〜と悶えてしまった。(カンヌとかホント◯ソだな。いや、ご本人が受賞を喜ばれてるなら良い事なのですが。)

東京の魅力再発見!的な映画としてはとても良かった。
あと「サントリーBOSSカフェオレ飲みたくなる映画」としても!笑


※余談1
「The House of the Rising San」
オープニングとエンディングがanimalsカバーの歌詞で平山と同じ“男性目線版”、石川さゆりが歌ったのがボブ・デュランやちあきなおみ等カバーの歌詞で娼婦“女性目線版” と違いを比べるとまた面白いかも??

※余談2
元旦、予告中に名古屋では震度4の地震。
劇場内の人たちがあまりに冷静すぎてそれが理由にドキドキが止まらないまま鑑賞した。
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