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PERFECT DAYSのokapiのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.8
映画には、人に希望や光を与える力があるのだと再認識させてくれた。
そしてこの作品は、その希望を押し付けがましくなく、しかし力強く伝えてくれた。

個人的な好みだけど、ショーみたいな映画や、泣ける題材の映画は苦手で、普段の生活では光が当たらない人に、静かに光を当てる作品が好きだ。この作品はそういった作品の最高傑作なのではないかな、と勝手に思う。

慎ましく真面目に働き、ささやかな幸せと共に生きる主人公を丹念に追う。ただただ同じような生活を繰り返す。ごくたまに予期せぬことが起きたりする。
何気ない毎日だが、音楽がよりそうだけで、美しい光が主人公を照らすだけで、映画のワンシーンになる。

真面目に働く主人公が、とっても美しくみえる。
真面目に働く人は、美しいんだ。と気づく。
自分が働けなくなって、一年と少しが経つ。その現状もあり、働く人が輝いて見える。働くことがとても大変なことは、自分も経験済みだから分かっている。しかし、働けるのは当たり前ではなくありがたいことで、真摯に働く人は本当に美しいのだ。職業に限らず、誰だって。

あとは自分だけのささやかな幸せを見つけて、離さないようにしっかり携えて、音楽や美味しいものや行きつけのお店で自分自身を保ちながら、なんとか生きていければ人生上出来なのだ。文面にすると容易く聞こえもするけど、これは結構難しいことだったりする。映画の世界より現実は厳しいし、自分の心が安定していないと、バランスが崩れたり、見失ったりする。
生きていくのは難しい、わからないことだらけで、わからないまま死んでいくのだから。

無口で感情を出さない主人公だって、声を上げていらだち、どうしようもできない感情に戸惑うシーンがある。このシーンには少し安堵した自分がいた。穏やかな変わった人、で括れない影や闇がある。しかし、そこは映し出しすぎない。過去は語りすぎない。
現実世界の私たちにも、どんなに親しい人や他人にも、話せない内緒の部分があるように。そのバランスも絶妙でよかった。

本当に、2024年1本目に観ると決めて、実行できてよかった。

しんどくなった時、この映画と主人公を思い出して、どうにか乗り越えていけますように。
木漏れ日のように、光と影は交互にやっては消えるけど、今よりも、影より光に目を向けて過ごしたい。
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