OB

PERFECT DAYSのOBのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.7
本当に面白い映画は、必ずしもそこで何かビッグイベントが起きる必要はない。

本作は、役所広司演じる“平山“の一週間のルーティーンを綴っただけの映画に過ぎない。

彼の仕事ぶり、好きな趣味のこと、お酒も含んだ食事風景、土日に奉じる家事、等々、基本は同じことの繰り返し。ちょっとした変化は起きるが大勢に影響は無い。

どれも特別なことでは無いし、彼の無口で几帳面な生活ぶりから、いわゆる普通よりも一見非常に地味に映る。

しかし本作を見進めるに従い、ちょっとした彼の仕草や会話から、なぜ彼が今の彼になったのか、彼はこのような生活の中でどのような経験をしてきたのか、が垣間見えてくる。 

その演出が冴え渡っているが故に、観る我々の想像を掻き立て、彼の生い立ちや今の境遇、彼の心の内に思いを馳せてしまう。映画内で実際に語られなくても我々の脳内変換で十分イベントを補完している。

昨今の大部分のイベント型映画は、そのイベントを大迫力、よりリアルに魅せることに腐心し、その時代の最新技術や世相事情を活用する。 
が故に製作年代が透けて見えすぐに陳腐化してしまう。

役所さんがどこかでコメントされていた「100年後でも鑑賞に耐えうる映画を。」という意味が良く解った。
仮に本作を100年後に誰がか観たとしたらその時の時代状況に応じた脳内変換を、その視聴者は行うだろう。

それだけの普遍性を持った映画を作り上げたヴィム・ヴェンダース、役所広司、日本人サポートスタッフに敬意を表したい。

追記)
登場する“音楽“と女性“が皆粋で本作の普遍性をさらに押し上げていました。
拍手👏
OB

OB