AyuAyu15

PERFECT DAYSのAyuAyu15のネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

めちゃめちゃネタバレです。

あまり他人と関わらないで、独りで自分の思うように完璧に仕事が出来るTokyoToiletの仕事が好き。

…物の極力少ない部屋でシンプルな生活。
カッコいい。
持ち物は少ないようでいて、趣味の盆栽の鉢もなかなか高そうな素敵なものを使ってるし、チャリンコはオシャレだし、服だってあれでなかなかモノはよさそうだ。
色々コダワリのある人なんだろな。

こういう生活が出来る人憧れちゃうな、無口で、無駄なく淡々と日々をこなし、その隙間に人の温かさや優しさだけを見つけ汲み取って静かに微笑んでいる…

何て思って観てたけど

なんでわざわざトイレ掃除?
もちろん見てるとそんな仕事にも生き甲斐を感じていそうだし、この人にはピッタリの仕事なんだろな、なんて凄いんだろう、なんて初めは見てたけど、でも、選べるとしたらわざわざトイレ掃除じゃなくったっていい。

自らをわざわざそんな自由のない場所に閉じ込めているかのようにも見えてくる。

でも、こういう仕事をしているからこそ見えてくる世界がある。
世界というか、ヒトの本性、というか。

虐げられたり、モノや空気のように扱われたりすることに慣れてるように見える。
子どもと手を繋いだ、その子どもの手をお母さんが拭いてたり、酔っ払った風な人にぶつかられたりしても気にしてないみたい。

独りでいる人にしか、独りになった人にしか見えてこない世界
独りの人には独りの人が見えてくる。
迷子の子どもや、ホームレスや、いつも独りでベンチでお弁当食べてる女の人や…

「この世界には色んな人がいて、それぞれが色んな世界に住んでいるんだよ」
(…見えない壁で隔てられていて、お互いの世界は見えないようになっている。
同じ一つの世界のように見えるけれど、実は理解し合えない、一緒に住めないたくさんの世界に別れてる)

「こんどって、いつ?」
「いまは、いま、こんどは、こんど!」

家出して来た姪っ子さんを迎えに来た車。妹。
昔は厳しかった?お父さんの話し。
金持ちで堅そうな家と見た。

影は重なると濃くなるのかなぁ

木漏れ日、揺れる木の葉が重なる時に生まれる影
ひとときも同じ形を留めずに、時には解け合いながら移ろいゆく光と影

求めて手に入れた自由?
それとも、もしかしたら、歩んだ道が辿り着いた結果放り出された自由?

この人はどんな何を追い求めて家を出たのかな、出されたのかな

虐げられることに慣れてるように見えたのは、トイレ掃除を始める前からのことなのかも。
親から?世間から?

結果の、自由。そして自由は、不自由。

ここは『朝日の当たる家』なのか、それとも何にも束縛されない気分のいい自由な場所なのか

朝が好き。朝に全てをリセットして生まれ変わって、また新しい1日を完璧に気分よく過ごす。
独り誰にも邪魔されず、出来るだけいつも通りに、変わらず、過ごす。
今を、生きる。
いつか、は、いつかわからないから。
ちょっと笑顔になれることがあれば、それでもうパーフェクト。

仕事で心を無にして動き心地よく疲れ、いつもの風呂屋の開店を待って一番風呂を浴びに行き、いつもの居酒屋で飲んでいつものママの店に行き、眠くなるまで本を読んで寝る。
出来るだけ無駄なことに心が動かないように。

毎日が完璧。

ラスト、泣けるなぁ。

ほんと、噂通り、役所広司よかった。
それと、楽曲の使い方がなかなか渋かった。
そして、ヴィム・ヴェンダースの詩情あふれる美しい映像。

しみじみ心に残るいい映画でした。


あと、余談ですが個人的に最近都会に行ってないんで、都会のトイレ色んなハイテクでオシャレなのあってスゲーな!って思いましたー!
AyuAyu15

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