さちこ

PERFECT DAYSのさちこのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.1
2024年1本目。

役所広司がすごい。極端にセリフの少ない作品だと思った。登場人物の少ないセリフの中に、いろんな思いがこもってることが分かる。平山さんのこと全然知らないけど、スクリーンの中にいる平山さんに、会いに行きたくなる。

渋谷のトイレ清掃員の平山の毎日のルーティンの日々。ネットやテレビは見ない、ホウキの掃除の音で起きて、コーヒーを買って、仕事をして、音楽を聴いて、本を読んで、眠る。
普通だったら見逃してしまう空の美しさや、木漏れ日や、目を逸らしてしまうホームレスのおじさんを愛しい目で見つめる。
休日は掃除をしてフィルムカメラを現像して、そしてまた本と音楽を。たまに行きつけの居酒屋に。
完璧な日々にも、他人の影響でうまくいかない日があり、たまに感情的にはなるけれど、晴れのち曇りのち雨のち晴れ、みたいな感じで。天気だから仕方ないか、みたいな感じでぜんぶ受け入れていく平山を「豊か」だと思うし、「羨ましい」とシンプルに私は思った。
こういうふうに、生きていきたい。

でも一方で、他人との接触を極端に避ける平山の態度や、肉体労働がいつまで続くのか、縁を切った?家族とのことや、この人の「この先」は?と考えてしまう部分もある。
妹の「本当にトイレ掃除してるの?」の一言が重い。ここにすべてが詰まってる。
ニコを救ったようで救えてない、タカシの無責任さをどうにかすることもできてない、他人に干渉せず、もしかしたら行き場のない怒りや悲しみを自分の中に溜め込んでいるのかもしれない、とも思える。

余白が多い分、観ながら、観た後、いろんなことを考えた。「完璧な日」ってどんな日で、「完璧な人生」ってどんな人生なんだろう。

分からないけど、音楽と文学を愛して、自分の喜怒哀楽を感じて、たまに他人と向き合う、木を友達だと言えて、木漏れ日を楽しめる、そういう人間では、いたい。
最後の「木漏れ日」の説明に何故かグッときた。英語ではきっと説明できない、日本人でよかったなと無性に思った。
さちこ

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