さちこ

哀れなるものたちのさちこのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
ワクワクしちゃうイカれてる設定から始まって、想像以上におもしろかった。何よりエマストーンが演じるベラが、とっっっても良い。演技力なのか迫力なのか、観ててすごく惹き込まれた。

脳みそは胎児で見た目は淑女のベラが、その純粋で何も知らない目でどんどん世界を知っていく。ベラ視点で、モノクロがカラーになる瞬間がとても良かった。

感動、快楽、絶望。
自慰行為やセックス、貧富の差、騙されること、本を読むこと。何かを学んだり壊したり、一生懸命に世界を知りながら生きていってた。
ベラが無邪気さで「良識ある社会」を壊していく様子は快感だったけど、飢餓で苦しむ子供を見ても結局無力な金持ちに残念さもあった。

女性が自分の足で進んでいく様子。
性欲、脅迫、父性、いろんな方法で男がベラを支配しようとしてくるんだけど、純粋なベラは「は?」みたいな感じで殴りかかってて、そこがすごく良かった。長い時間の中で女が失ってしまったこういう疑問みたいなものをベラはガンガン持っててカッコよかった。

男性の所有欲、征服欲、支配欲に腹立ちながらも、結局そのリード力とか財力に助けられてる様子もよく分かった。
ラストは特に、穏やかな笑い声とタイトルが皮肉だった。

男も女も若者も老人も、娘も妻も支配者も旦那も、登場人物みんな、「哀れなるものたち」。
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