シネラー

PERFECT DAYSのシネラーのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
今年の初劇場鑑賞で本作をチョイス。
主演の役所広司がカンヌ映画祭で
主演男優賞を受賞した事でも
気になっていた作品だったが、
それも頷ける演技力に加えての
作品自体の雰囲気も素晴らしかった。

寡黙な中年で公衆トイレの
清掃作業員である平山が、
淡々として同じように見える日々の中
での生き様を描く内容だったが、
そのドキュメンタリー的な雰囲気と
ささやかな幸せを汲み取れる
平山の日々はとても魅力的だった。
役所広司のほぼ表情や仕草で
伝える自然な演技が素晴らしく、
殆んど台詞が無いだけに凄いと思った。
内容に関しても、
トイレ清掃の様子やその後の日課とも
言える振る舞いを淡々と描きながら、
そこでの細やかな発見や微笑ましい事も
嫌な事も描かれていく事で、
同じようでも違う
新しい毎日を感じさせるようだった。
飲食店や銭湯に古書店の常連でも
基本的に孤独でアナログな生活を送る
平山であるが、
他者との深い関わりから逃げている
ようにも感じる生活でもあり、
その点では羨ましくも憧れはしない
生活だと感じられ、
結末での表情はそんな複雑な心境が
不意に露呈したのではと思うところだった。
物語として変化が起きそうな機会が
幾つかあるにも関わらず、
そこに自分から足を踏み入れないのが
良くも悪くもな人柄だと思った。
又、東京の繁華街とは言えない街並みが
作中で描かれているのにも味わい深く、
それでいて平山が好むカセットテープ
による洋楽が良い雰囲気を
醸し出しているようだった。

不満点や気になる点はないのだが、
言ってしまえば物語に大きな起伏が無い
内容ではある為、
序盤で作品に退屈さを感じてしまうと
以降はずっと退屈に感じさせる位に
人を選ぶ内容ではあると思った。

早朝でも40分程はかかる
自動車通勤をしている身ではあるが、
その中でウォーキングや新聞配達に
ラジオ体操やゴルフの素振りをする人の
日常を見るのも一つの幸せであると
改めて感じるところだった。
嫌がられるイメージもあるトイレ掃除は個人的に好きではあるので、
本作はそういった意味でも清々しかった。
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