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PERFECT DAYSのmiyuki101010のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
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役所広司さん、すばらしすぎました。無言の演技のすごみ。

音楽ももちろん、作中に散りばめられたあらゆる要素を拾って追いかけたくなります。

美しき暮らしのルーティン。
習慣はルーティンだけど、同じ日はない。

繊細だけれど芯のある糸で、淡々と粛々と、静かに布を編んでいくような日々。
日によって色が微妙に変わったり、ときどき掬う糸や段を間違えたりするけれど、全体を見ると唯一無二の美しい編み目ができあがっているような。

これこそが「丁寧な暮らし」だと思いました。
「こんなふうに 生きていけたなら」というキャッチコピーのとおり。

いろいろな人が生きていて、それぞれに物語がある。
それがつながったとき、また新しい物語が生まれる。
当たり前のことだけど、それを改めて感じました。

平らな山。「平山」って苗字も彼の人生や暮らしぶりにハマりすぎでは?とも一瞬思いましたが、やはり考えすぎだったようです笑
▼wikiより
「主人公の男に与えられた「平山」という名前は、『東京物語』や『秋刀魚の味』で笠智衆が演じた登場人物をはじめ、小津安二郎監督の作品に繰り返し使われる名前である」
でも、やっぱりぴったりだと思ってしまいます。

観た後、美術を担当した桑島さんという方の取材記事をとても興味深く拝見しました。
▼引用(https://www.athome.co.jp/cinemadori/12955/)
「平山はセンスがいいけれど、オシャレにあまり興味がないし、それを前面に出さない人。生きてきた道のりが、自然にセンスの良い人をつくりあげる、そんなキャラクターを醸すことができたらいいなと思って家具などを選びました」

「こんなふうに 生きていけたなら」と強く感じるけれど、その「こんなふうに」がいまいち言語化しきれずにいましたが、これだって思いました。生きてきた道のりが、自然にセンスの良い人をつくりあげる…

そんな中で、家族や日々かかわる人たちとのひずみが生じたり、さまざまなトラブルが起きたりして、心乱れたり悲しさ、やるせなさでどうしようもなくなることも起きる。それでも少しだけ前を向いて、日々を粛々と生きていく。
そのときに、自分が生きてきた道のりこそが自らを助けてくれるのかも。そんなふうに生きていけたなら…そんなふうに生きていきたい。
ラストシーンで何故か泣きそうになってしまったけれど、その理由が観終わって考えてみた今少しわかった気がします。

久しぶりに長々と感想を書きたくなりました。平山さんの足元にも及ばない、チープなベッドサイドランプの灯りの下で。
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