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PERFECT DAYSのKnIのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

日本への幻想と日本企業の思惑。

とても楽しみにしていた作品。監督は自分の大好きな作品である Paris,Texas の Wim Wenders。そして舞台が日本。好みのトンデモニッポンではないにせよ、見覚えのある俳優陣がどう映画としてパッケージされるのか期待に胸踊った。

観た直後、感動もしたし、素敵な作品であると思ったのと同時に違和感があった。
主人公のトイレ清掃員の平山は、朴訥とした人物。真面目に仕事に取り組みながら、昔からの趣味なのか古本の読書とカセットテープによる音楽鑑賞、アナログカメラでの風景写真の撮影を嗜み、日常のちょっとした機微を楽しんでいるように見える。ただその姿が自分にはあまりにもファンタジーに映った。
社会との関わりに一線を引き、自分のテリトリーの中で生きる。実家も裕福で、親の介護をする事もなさそうだ。過去の詳細は分からないが、父親とは何かあったらしく、現在の彼の人格形成に影響していそう。彼の浮世離れ感が今回は悪い意味での違和感になってしまった感じ。「これが日本人の姿だ!古き良き日本人の心、素敵。」みたいな在り方にちぐはぐさを感じてしまった。
この作品が自分の生活環境とは全く違う遠い土地の話であればこうも違和感は感じる事はなかっただろうけど、同じ日本であるが故に少し入り込めなかった部分はあるかもしれない。

THE TOKYO TOILET という渋谷区内17か所の公共トイレを刷新するプロジェクトの広告目的で制作された本作。そこにWim Wenders の日本を愛してるが故の幻想が乗っかって、奇妙な違和感を生む作品に仕上がった。勿論木漏れ日を慈しめる人でありたいと思ってる。そう願っている。
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