トゥトゥ

PERFECT DAYSのトゥトゥのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

人と人の人生が重なりあったとき、重なりあった部分が重なりあうまえと同じなわけがない。木漏れ日のように揺らめいて、重なったり離れたりして。何歳になっても、どれだけ小さな世界にいても、誰かにほんのり好意を寄せたり、傷ついたりする。そして、住んでいる世界が違うと言いながら、やっぱり世界同士は少しずつ重なって、ぜんぶは重ならなくて、それは嬉しいことか、さみしいことだろうか、と思った。

毎日、繰り返しのようで、同じ日は来ない、ということ、言葉にすればまぁこんなに簡単なことだけど。
木漏れ日、という単語からインスピレーションを受けて制作が始まったんだろうか? たしかフランシス・サンダースの「翻訳できない世界のことば」にも木漏れ日という単語が紹介されていたな、と思い出した。


観る前は労働讃歌のようなイメージを抱いていたけど、仕事場の人数が減ってしわ寄せがきたときに「こんなの毎日は無理だからね」と平山が怒っていて、それは本当にそうなので、共感した。
むやみな労働讃歌ではなくて、自分の手のなかにおさまるような、それでいて世界を少し良くできるような、そういう労働を肯定するような視線を感じた。
(でも、たいていの職場はそのまま人員補充されずに回すしかないんだよ。次に平山が潰れて辞めるまでな!)

気になったところ
・清掃員の服やタオルが綺麗すぎる。ユニクロ協賛のせいか
・掃除している公衆トイレも綺麗すぎる
・都内であの広さに住むのは(古いとはいえ)どれくらいかかるんだろう?
・木についてのセリフを入れたすぎたのか「この木はおじさんの友達?」という、年頃の女子からは考えがたい発言が飛び出す
・カセットをパクってた女の子はなんであの車内で平山の頬にキスした? 舞台は日本では?
・すべての日々に差異を見出して愛する、どの一瞬も木漏れ日のように同じではなく二度と戻らないのだ、というのがテーマだと思っていたのだけど、現像した写真は選別して破って捨てたりしているのが気になった。じゃあテーマは、すべての瞬間を愛する、というのではなく、納得のいかない瞬間もあるけどそれでも生活を愛していきたい、ということなのかなぁ。

意地悪な言い方をすると、こういう「日々の"実際の"労働が大事」みたいな映画って日々パソコンをカタカタしてるような所謂インテリが好みそうだなぁとは思った。自分自身はうまく資本主義システムに乗り、利益を享受し、そのシステムを強化しながら、本当は自給自足の生活がしたいんだよな、とか言うような、そのくせお金の不十分さや日々の単調さには耐えられないような、そういうインテリが。まぁそういう人たちが観に行っているだろうし、ターゲッティング大成功なんじゃないですか?


よいと思ったのかよくないと思ったのか、いまいちわからない感想になってしまった。絶賛するほどではないかなとおもう。インディーズ系の映画ならこのメッセージをこの方法で伝えてもいいと思えるのかもしれないけど、やっぱユニクロ協賛とかでこのメッセージをこのまま込めると「おまえらは搾取されていて美しい」という構造になりかねない。とおもう。
トゥトゥ

トゥトゥ