ベルリンBabylonでヴェンダースの新作を観るというほとんどあり得ないようなセッティングで鑑賞したためか、浅草駅の居酒屋の水割と石川さゆりのポテトサラダがあまりに羨ましく、渋谷にあるらしいほとんど違和を生みだすことのみを目的としたかのような種々のトイレの存在を知って不思議に楽しい気持ちがした。
役所広司の所作のひとつひとつが、銭湯で頭を洗ったり(鼻まで湯船につかる！)、盆栽に霧吹きをかけたり、濡れた新聞を畳に撒いて掃いたり、もちろんトイレの拭き掃除そのものも、まったく身体から剥がれることなくぴたりとひっついているようすが美しい。そして家出少女と二人して自転車に乗るシーンの映画的な清潔さ！
さゆりさんがママとして客に囃し立てられて渋々といったようすで歌う「朝日楼」。樹木のモチーフと幸田文「木」。
