あまのうずめ

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命のあまのうずめのレビュー・感想・評価

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1852年イタリア・ボローニャ、ピウス9世統治の教皇領に生後6か月の男児が家族と暮らしていた。両親はその子にユダヤ教の祈りを捧げている。6年後、異端審問所の補佐官ルチディはモルターラ家を訪れ家族構成を確認したいと言う。マリアンナはその時にいた5人の子供たちを集めると、補佐官は6才のエドガルドが何者かの裏切りによって洗礼を受けている、よって教会の命で預かると告げる。


▶︎『肉体の悪魔』『蝶の美学』のマルコ・ベロッキオが1858年のエドガルド・モルターラ誘拐事件を題材に監督した作品。1881年までのエドガルドと家族、ローマ教会の内情を描いている。

イタリアがまだ統一されてない時代で、教皇が絶対的力を持っていたとは言え実に苦々しい事件。誘拐事件よりも恐ろしいのが宗教による刷り込みで、そこに対ローマ教会の世間と各国の情勢を併せていたのが興味深かった。

事件の裁判で悔やむ父の姿や変化するエドガルドの様子が印象的で、側から見ると狂信的としか映らないローマ・カトリック教会の欺瞞が色濃く出てた。

聖書ではユダヤ人はキリストを売った裏切り者ではあっかも、そもそもキリスト教はユダヤ教の派生で新興宗教であったはず。それが強大な力を持つより、トイレにさえ神様がいると信じる方がまだマシだとつくづく思った。

ただ事件とその後を時系列に追っただけで、主題を観る側に任せたのは(嫌いじゃないけど)良くもあり悪くもあるようで、ベロッキオ監督にはもっと切り込んで欲しかったようにも感じる作品だった。