チャンミ

落下の解剖学のチャンミのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.2
『落下の解剖学』すさまじい作品だった……
自宅から落下した夫の不審死をめぐる法廷サスペンスの枠組から、言葉という社会的なツールを通して逆説的に、一人の女性の肉体性、多層的な側面が浮かび上がる。「LGBT」や「クィア」と冠された政治、言説、語りからも不可視化されやすい、バイセクシュアリティ、特にバイセクシュアル女性(さらに言うなら稼得者としてのバイセクシュアル女性)という視点からの掘り下げもされるべき。
(性的マイノリティも含めた)女性というマイノリティや、性的マイノリティが、シスヘテロ男性を中心とする規範的な社会でいかに、倫理性や言葉による「説明」を求められ、性的客体化されるのに、主体的なセクシュアリティはあらわしにくく、肉体性を剥奪されやすいかという縮図が、いち人間関係を通して顕在化される「ケンカ」のシーンは壮絶……

主人公サンドラの、主に英語を話し、得意ではないフランス語を話すよう要請され、「語りを信頼されない(第一言語を話さない≒制限された)存在」という複合的な「語りにくさ」の象徴を体現する、ザンドラ・ヒュラーは見事としか言いようがない。
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