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落下の解剖学のayellowbirdのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.2
フランスのジュスティーヌ・トリエ監督が手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞パルムドールを受賞したヒューマンサスペンス!
人里離れた雪山の山荘で、視覚障がいをもつ11歳の少年が血を流して倒れていた父親を発見し、悲鳴を聞いた母親が救助を要請するが、父親はすでに息絶えていた。当初は転落死と思われたが、その死には不審な点も多く、前日に夫婦喧嘩をしていたことなどから、妻であるベストセラー作家のサンドラに夫殺しの疑いがかけられていく。息子に対して必死に自らの無罪を主張するサンドラだったが、事件の真相が明らかになっていくなかで、仲睦まじいと思われていた家族像とは裏腹の、夫婦の間に隠された秘密や嘘が露わになっていく…。

これぞ今どきの法廷劇! 法廷劇と言えば、無実の罪で起訴され、それから新事実を見つけて、逆転勝利をつかむというのが定番だが、本作は、むしろ法廷の場で被告に不利な真実や証言が飛び出し、主人公が追い込まれる展開が斬新。それも、裁判にならなければ絶対に表沙汰にならない夫婦間の問題や個人的な嗜好を暴露されるのは、当事者にとって拷問にも近い屈辱的な場であるはず。それでも、それを乗り越えて、身の潔白を証明しなければならず…。
“疑わしきは被告人の利益に”という言葉を世に知らしめた“推定無罪('90)”ですら、種明かしがあったのに、本作にそんなサービス精神はない。
孤高の主人公サンドラを演じたザンドラ・ヒュラーの迫真の演技に圧倒された。
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