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落下の解剖学のよもぎのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
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カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作を観に行ったらちょっと信じ難い位ホットな?セクシーな?ストイックかつ清潔感を纏いしかし得も言われぬ程蠱惑的な?すげー最高えっちな感じの弁護士さんが居たんですが???正直感想の7割そのセクシー弁護士に持ってかれそうなんですがそれはそれとして。

雪深い山奥の一軒家二階のバルコニーから夫が転落し家の中には彼の妻。第一発見者は視覚障害のある夫婦の一人息子。
証拠という証拠が無い状況の中で「妻による他殺」か「夫の自殺」かを争う裁判が始まる。過去の諍いや夫の精神疾患、妻の性的嗜好と過ち、息子を巡る問題、様々な夫婦間家庭間の問題を掘り起こし切り開き詳らかにしてこれが動かぬ証拠だと赤の他人達が我が物顔で土足で踏み込み得意げに掲げて見せる。終いには事実などどうでもいいと言い放ち自分の主観的価値観を根拠とした推測をあたかも事実の様に話して物語を創り夫よりも成功し彼を支えず彼を死なせた妻を責める。

タイトルの通り、一人の男性の"落下"事故とその真相を問う裁判を通して夫婦や親子の表面から内側の汚い部分恥ずかしい部分グロテスクな知らせるべきでない、知らせたく無かった部分まで尽くを切り開き引き摺り出し明らかにして並べ、それだけに留まらず裁判に関わった検事や弁護士、刑事達関係者から裁判をエンタメの様に面白がり消費する一般大衆まで、各個人が抱える偏見や価値観や歪みを全て解剖してこれでもかと丁寧に並べて見せてくれる作品なので鑑賞直後の感想は正直「疲れた」しか出て来ない。それ位疲労感が半端無い。ラストの奥さんと子の気持ちめっちゃわかる。
それ程まで事細かに人間を描き切る脚本は見事というより無い。流石。アカデミー脚本賞も納得。

後私が女性なのもあると思うけど、他責思考と嫉妬で被害者意識にメンタル拗らせた夫に同調して妻を悪者にしたがるやつ全員男だったな…(半目)とは思いました。おれ、検事と刑事、めっちゃ嫌い。すごく嫌い。そして素晴らしくお利口さんで良い子で可愛い犬に可哀想な事する人間は万死に値するので情状酌量の余地があるとはいえ○○(ネタバレ回避)、貴様も無罪ではないぞ…。(※⚠️作中犬は死にませんが可哀想な目に遭うシーンがあります)。

そんな全編通して凄まじい疲労感に荒む心を癒し支え包み込む様なちょっと草臥れつつも誠実でストイックで清廉な色香を放つ弁護士ヴァンサン、まじで何だったん…………………って位存在がセクシー(しかしnot性的)でビックリしました…。存在がアカデミー賞だったんですけど…………。マジで何者…………。
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