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落下の解剖学のkuutaのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
雪深い山間の山荘で起きた転落死。その場にいたのは作家の妻と障害を持つ息子。果たしてその死は自殺だったのか、殺人だったのか…?

繰り返される現場検証、そして法廷で暴かれていく作家夫婦のプライベート。家族の死という傷に繰り返し触れられるのはもちろん、本来であれば知られなくても良いことが世間に知られ、ただの夫婦間の問題について他人にあれこれ裁かれ責められる地獄。

本当のところ何があったのか。法廷での証言や提出される証拠に嘘は無いとして、そこで見えないもの、語られていない真実はなんなのか。夫の抱えていたもの、妻のストレス、息子のトラウマ。最後のシーンの会話の意味。映画を見てすぐより、時間を少しおいたほうがじわじわ味がしてきて、どんどん人と語りたくなってくる映画。

ずっと緊張感があり、地味ながらとにかく引き込まれる映画なのだけど、死の真相をめぐるミステリーとして見てしまうと最後に期待を裏切られるので注意が必要。

個人的には、夫のやりたいこと(山荘で民宿)に合意して夫の国(フランス)に移住したものの、妻にとっては言語的にしんどいので(妻はドイツ人)、家の中では英語を使っている、という自由じゃない状況のリアルにヒリヒリした。あるたるだよね。でも言葉の細かい「機微」を伝えられないのはストレスだよね…
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