若色

落下の解剖学の若色のレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.7
盲目(※といっても近くなら見えるようなので、完全な盲目ではない)の息子が弾くピアノの旋律に注目した。
事故により視力を失った息子は、優れた聴力を得る。おそらく一度聞いてある程度弾けてしまうような実力。
彼が弾くピアノは、彼の心情、だけでなく、鑑賞者は最後までわからない真実を表現している。例えば、父親が落下した後のピアノの旋律は映画のタイトルにもある「落下」を表現すような、低い方、低い方にどんどん向かう。一方で、自死か他殺かの裁判が佳境に入ると、右手も左手もクロスするようなやや混乱している旋律を奏でる。
裁判が進むにつれ明らかになる両親の不和、性生活、母親の性癖、不倫(といってもフランスは不倫に比較的寛容)。
全ての答弁を傍聴しする。
その間にも成長する。
真実に価値を置く裁判は観ていて苦しい。配信で観ていたら早送りをしたくなる。でも観客はこの裁判に付き合わなければならない。だから劇場で観ることができて良かった。

わたしは息子くんの決断を尊重したい。
決めた彼を褒めてあげたい。
若色

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