若色

DOGMAN ドッグマンの若色のレビュー・感想・評価

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
3.8
リュック・ベッソンが描く新ダークヒーローは生き抜くためにこうならざる得なかった孤独な男。注目すべきはドクターとの会話。

「ジョーカー」のような重く、狂った人だと観るの辛いなと構えていたが、全然そんなことはない。主人公ダグラスは幼少期、凡人なら死に絶えるであろう父親からの虐待を受けていた時、信仰心ばかりが強い兄が貼った聖書の一説を書いた布を「GOD」→「DOG」と裏側から読む。これは神の啓示であり、彼の運命を決定づける。彼は脚を失う代わりに犬とのコミュニケーション能力を身につける。犬たちはダグラスの全てを理解し、行動する。殺しも盗みも意のままだ。
注目すべきはダグラスの勾留中に交わす精神科医との会話劇。
シェークスピアを全て暗記しているというダグラスの知的なしゃべり口と、何かプライベートな不安を抱えながら話す会話が中心となって展開するのが本作の軸なのだが、会話の内容だけでなくテンポ、カメラワーク全てのセンスがいいと思う。洗練されていて、観ていて気持ちがいい。
ラストは大作を何本も生み出しているヒットメーカーが作ったとは思えない…ちょっと陳腐さも感じてしまったが、変にこねくり回されるより良かったのかも。

盗みは確かに悪い。殺人は良くない。
でも、じゃあダグラスはどうすれば良かったのかわからない。当然人として受け取れる、親からの愛も、法律による生存の術も与えられなくて、じゃあどうすれば良かったのだろう。

追記
ちなみにこの映画を見終えてからというもの「sweet dreams」をヘビロテしている。
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