若色

オッペンハイマーの若色のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
わたしにとってのいい映画の定義は「鑑賞後どれだけ話したくなるか。」であり、どんな駄作であっても、「とてつもなくつまらなかったんだけど!!!」と話している時点で、わたしの負け(いい映画だった)だと思っている。
そういった意味で「オッペンハイマー」はすこぶる名作であった。
大枠で3つの場面を転々と渡り歩くのだが、それが一体どういった場面なのか説明されることはなく、登場人物が誰なのかも不明。なんとなーく、「この人が責められてるんだな…」とか、「この人怒ってるから劣勢なんだろうな」というのはわかるのだが、アメリカ史やアメリカ議会の制度がわからないと、何をしてるのかようわからん。だから3時間の鑑賞後は、車の中で体をうねらせ(固まった体をほぐしている)、「あのシーンはなんだったんだよおおお?!」と憤り、一緒に観てた人に当たり散らかしていた。
しかし、クリストファーノーラン監督の前作「TENET」よりかは…ピアノ線ほどの細ーい糸口を掴んでいるような気にさせるのが、ノーラン監督の匙加減のうまさ。見事さ。
これは個人的感想だが、「TENET」を観た後は、もう何がなんだかわからなすぎて、見返そうとも思えなかった。完全に置いていかれていた。
でも本作は、歴史を辿るシーンがあり、しかもその歴史が日本への原爆投下という日本人であれば関心を寄せずにはいられない事象であるからこそ、なんらかの感情を伴って観ることができる。感情が入るとストーリーがどんどん入ってくるため、それ以外のようわからんシーンとの理解のグラデーションがはっきりしてくる。理解が深い部分があるだけに突き放せない。
もう一度…と観たくなってしまう、憎らしい映画だ。
若色

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