Kazu

落下の解剖学のKazuのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます


今作は一見犯人探しのように思われがちですが、物語は全く別物でした。

真実が必ずしも正解ではないということを思い知らされる…

間違った事が行われたとしても、
それが正解となる理不尽な世の中なのです。
それぞれが、それぞれの立場で己の主張を繰り返す…

そこに真実などあり得るはずもなく、己の利益しか考えていません。

裁判官も、検察官も、弁護士も、

裁判、裁判所という場所を社会の縮図として描かれる。

真実を見出す場所ではなく、検察は犯人を作り上げなければならない、
それに対し弁護士は犯人を守るストーリーを作り上げる(そこに真実はなくても良い)

現代の家族や夫婦が必ず直面する壁をテーマとし、社会全体の問題提起を素晴らしい脚本で完成されている。

夫婦のパワーバランス、両者の立場や権利、息子との関係性

誰に感情を乗せるか?
今作は珍しく私には、それができませんでした…

長年連れ添った相方がいる人なら少なからず夫婦喧嘩はあるはず💦

裁判所での証拠の一つ、夫婦喧嘩の録音声(かなり激しく醜い)
当事者は感情的に周りが見えなくなりエスカレートしていますが、普通の夫婦なら、そこに殺意が生まれる様な喧嘩はありません。

しかし今作は夫が死ぬ、
自殺、事故死、他殺、

解剖学、法医学者は科学的に死因を特定することが目的であって犯人探しはしません。
科学的に死因が特定できない場合もあります。

今回の様にある意味、密室殺人のような場所に妻しか存在しないシチュエーション、何が起こったのかを法廷で解明して行く中で、真実は妻サンドラの胸のうちにしかありません。

息子ダニエルの証言が重要になるという切ない結果になります。

4歳で不慮の事故により視覚障害を患い、それが元で両親が不仲になって行く過程をダニエルは幼心を痛め、傷ついている。
父親が死んだことの原因さえも自分にあるのではと…

父親が死んだ以上、もう自分には母親しかいない…
そんな苦しみや寂しさのすべてを背負い、苦渋の決断を真実としたダニエルの言葉に胸があつくなりました😭

モヤモヤする結末ではあるものの、真実だけが正解ではなく、
それぞれの立場でいかに幸せに生きて行くことが正解なのかを模索する素晴らしい作品でした。

サンドラ・ヒュー演じる妻サンドラ
いゃぁ〜凄い人物です。

解剖したら血液が流れ出てこないような…

あなたは何のために生きてるの?
誰のために生きてるの?

今作は役名も同じ"サンドラ"・ヒューが演じることで完成した作品、
監督も当て書きと仰るのも頷ける。


日本の実態として…
遺体解剖の死因ですら、金のために検察の言いなりに結果を曲げる法医学者も少ながらず存在します…
残念ながら日本の裁判はそういうものです。
Kazu

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