すずき

枯れ葉のすずきのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.2
現代のフィンランド。
スーパーで働く女性アンサは、廃棄食品を持ち帰った事でクビになる。
工事現場で働く男性ホラッパは、仕事中も酒を飲むアル中。
ラジオは連日、海外の戦争のニュースを伝えている。
どん底の2人は偶然出逢い、互いに惹かれ合うが…

初カウリスマキ作品の鑑賞。
全然作風も何も知らない監督だけど、良い噂はかねがね耳にしていました。

時代設定を現在にしている恋愛劇であるが、劇中で沢山流れる音楽や、映画のポスターが何故かレトロなものばかり。
女性のファッションも妙にカラフルだし、カラオケバーが出てくるのも昭和っぽい。
極め付けは、2人の連絡方法がメールでもSNSでもなく、電話である事!
流石に携帯電話ではあったが、スマホではなくガラケーだった。

ここまでレトロ感を強調するのは、往年の恋愛メロドラマのパロディを意図してる?
3歩進んで2歩下がる、名前も知らない2人がすれ違って中々出逢えないのも、クライマックスで交通事故があるのも、それっぽい。
しかし、そんなちょい昔の恋愛メロドラマあるあるをそのままなぞらずに、不器用な2人は所々でハズしてくるのがちょっと笑える。

世界は完璧じゃなくて、生きるのは辛く悲しい。だが、そんな世界だからこそ、必要なのは愛だ。
カウリスマキ監督は、昨今の世相・社会情勢を見て、その単純なメッセージを伝えようと引退宣言を引っ込め、再び作品を製作したのだろう。
傑作とまではいかなかったが、他の作品も気になるので見てみようっと。