小麦番長

枯れ葉の小麦番長のネタバレレビュー・内容・結末

枯れ葉(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

【笑わない門には‥‥】

「人生はミクロで見れば悲劇だが、マクロで見れば喜劇」
だナーー
と思いながら観てたら最後、わんこの名前が「チャプリン」でおぉ!となった笑

とにかくもう、ピクリとも笑わない労働者たちの日常を描いてるのに、出てる人達が皆さして辛そうに見えない笑
こちらも辛い気持ちにはならない。

電車で思い込むアンサの沈んだ表情と言ったら!パブの客たちのつまらなさそうな顔と言ったら!
同僚や警備員たちも誰一人として笑っていない。
アンサもその深刻な表情から「今の仕事もいつまで続けられるか‥‥」
等々考えてるのは重々伝わるのだけど、なのに作品全般に漂う雰囲気は喜劇。
労働者を撮っててもケン・ローチとは対極。
恋が始まりそうなのに二人の(見た目の)高揚感はゼロ笑

「笑顔でいる方が何かと得!」みたいに言われがちだけど、どうしてどうして。“全く笑わない幸福”がココにありますよ。
“笑わない門に来たる福” とでも言うのか。
いやーーースピリチュアルとかにハマっちゃってる人はこの映画観たら良いんじゃない?^^;
アンサはラストでは笑ってたけどね。

ホラッパが断酒を決めたキッカケのガールズデュオの曲。
何が決め手だったんだろう。
“膝までコンクリートに埋まってて家ではほぼ横になっていて、必要なければ出ない。
こんな自分は墓場まで行けるかわからないのに墓場ですらフェンスで囲われている”
‥‥
鬱を患ってるらしいホラッパにはこの歌詞で「動かねば!(宮崎駿的に生きねば!)」となったのかな。
このままではアンサも得られず、この先愛を感じることなく死んでゆく恐怖。


冒頭から狙ったように赤やら緑のロッカーにブルーのコート、赤いバッグ、同僚の黄色い服、青緑の壁紙。
フィンランドは実際もそんななの??
次々と現れる(パッと見)鬱屈とした登場人物たちを際立たせるかのような色彩の鮮やかさ。
“決して暗く陰鬱な作品じゃないんだよ” と伝えてるようにも見える。

ラスト、いつも同じ服のアンサのコートが新調したのかダークトーンだった。
彩りで飾らなくても満ち足りてきた顕れなのかな。
とにかく。どのシーンを切り取ってもポスターになりそうな画でした。
小麦番長

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