#関心領域
アウシュヴィッツ強制収容所の塀の向こうに暮らす一家のフィルターを通した世界。
それは都会の喧騒から離れ、子供たちの成長を見守る理想の生活で、人並みの喜びや不満と共にある誰しもの生活と変わらない。
その一方で、遠くから聞こえる怒号や悲鳴や銃声らしき音に、快晴の空を染める黒煙の不穏極まりないさりげないカットイン。
人物の視点、思考や仕事、家族の幸せ、目の前のおもちゃ等、其々の関心領域に留まりノイズを遮断。
ほぼ引きのショットで展開される人類の普遍的な営みと歴史的蛮行の狂演に、こちらの感覚が歪んでいく。
「ナチス将校もつらいよ」な、お仕事映画のストーリーテリングが、ある意味で真面目な彼らのキャラクターを強固にしていて、一種の催眠のように加害者側の物語に引き込む。
だからこその未来視で訴える「これは現在へと繋がる物語」というメッセージが強く印象的。
残虐性や非道さを一切見せずに、これだけ掻き乱すのも斬新かつ衝撃。
この題材でこのインパクトは「サウルの息子」以来かも。
音は1番想像力を持った表現方法だということを再認識。
音（音響）音楽じゃなくて、音がこんなにも怖いと思ったのは初めてかも知れない。
エンドロールの音楽は恐怖を引き出す魔曲ですね。
あとは、パルムドールに続いてグランプリもブチギレサンドラ・ヒュラーとお利口犬でした。
