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関心領域のmmsanのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
5.0
アウシュビッツ強制収容所の隣で暮らす家族の関心の領域。壁の向こうでは絶えずパン、パンと銃声が響いて、悲鳴と怒号が響いて、焼却場の音が響いて煙がもくもくと上がっても、家の中でユダヤ人の歯磨き粉からダイヤを見つけたと笑っていて、それを眺めるこちらの居心地の悪さ。
音が象徴的に使われる。何しろ見えないので音しかない。真っ赤な画面に息ができなくなるような重低音が響く。煙の画面に子どもたちの鳴き声が響く。真っ暗な映画館でほんとに窒息しそうになるくらいの重みが乗っかかる。
真っ暗な中でユダヤ人のためにリンゴを土に残す少女がいるなかで、温かい布団で絵本を読んでもらう少女がいる。
関心を持った者はそこにはいられない。
効率がどうのこうのという会話が平然と繰り広げられる。
アウシュビッツ強制収容所は確かにそこにあるという現実が挟まれる。
エンドロールの幾重にも重なった悲鳴にも似た音を聞きながら、じゃあ自分は無関心じゃなくいられるのかと心をえぐられた。
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