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違国日記のmmsanのレビュー・感想・評価

違国日記(2023年製作の映画)
5.0
原作未読。新垣結衣演じる槙生が、自身の姉の葬式で、姪の朝を自分が引き取ると、配慮のない人達の前で宣言する場面での台詞「私は決してあなたを踏みにじらない」に心を掴まれて、そこからずっと物語に引き込まれっぱなしだった。
姉のことが大嫌いだった槙生。その姉の子どもである朝。愛せるかどうかは分からないけれども、朝のそばにいることを決意する慎生。慎生が言う、自分の姉に対する気持ちは自分だけのものだから、誰かと分かち合うことはできない、に、そうだよな、となった。ややもすると、なぜそう思うのかを理解したいとひとの領域に踏み込んでしまったり、自分の気持ちを分かってほしいと思ってしまったり。でもその槙生の考え方に触れた瞬間、ちょっとホッとした。そういう世界があってもいいんだなと。自分だけの気持ち。だからひとの気持ちも否定しない。
この作品のひととの距離の描かれ方が好きだった。みんな心の片隅で誰かを思ったり心配したり。さり気なさのなかに尊重がある。バイバイってちょこっと手を振る場面が何回か出てくるけど、そのちょっとした仕草が何か心を温かくさせるものがあった。
そして高校生という人生で一番瑞々しい時が共感を持って描かれているのも心に響いた。このパートを担う朝役の早瀬憩をはじめ、小宮山莉渚、伊吹姫奈、滝澤エリカがいずれも素晴らしい存在感だった。この4人の関係性や距離感が最高に良い。だからこそ終盤の朝の軽音部のライブシーンで4人が揃う場面が活きてくる。そしてそのライブを携帯の配信で楽しむ慎生。誰かが誰かを見つめること。たとえ全てを分かり合えなくても、ひととの繋がりや関わり合いって何て素晴らしいんだろうとじんわりと温かくなる。この場面で☆5と決めた。
最後にガッキーってほんとに良い女優さんになったなあと。ラフなファッションにポケットに手を突っ込んで歩くシーンの絵になること。そして朝の肩を抱く場面の絶対的な信頼感と安心感。もう貫禄すら感じて嬉しくなった。
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