一人旅

ハロルド・フライのまさかの旅立ちの一人旅のレビュー・感想・評価

4.0
ヘッティ・マクドナルド監督作。

イギリスの女性作家:レイチェル・ジョイスによる2012年発表の同名ベストセラー小説を、原作者自ら脚色し、女性監督のヘッティ・マクドナルド監督が映画化したヒューマンドラマで、死期が迫った旧知の女性に会うべく英国縦断の旅に出た老人の姿を描きます。

妻のモーリーンと二人暮らしの年金生活者の老人:ハロルド・フライが、末期がんでホスピスに入院中の元同僚の女性:クイーニーから1通の手紙が送られてきたことをきっかけに、自宅のあるイングランド南西部のサウスデボンから、クイーニーが待つ最北端のベリック・アポン・ツイードを目指し徒歩で旅する姿を見つめたロードドラマとなっています。

イングランド南西部から北端への約800kmに及ぶ長き道のりをひたすら徒歩で北上する主人公の旅路の顛末を、道中出会う様々な人々との束の間の交流と、自宅に一人取り残された妻の複雑な心情を軸に映し出した人間ドラマで、果てしない旅路の過程で最愛の一人息子を巡る主人公の悲痛な過去や、元同僚女性に対する主人公の人知れずの想いが語られていきます。

『ハリーとトント』(1974)や『バウンティフルへの旅』(1985)、『ストレイト・ストーリー』(1999)、『家へ帰ろう』(2017)等の旧作に連なる、人生の晩年を生きるシニアの旅路を描いたヒューマンドラマであり、『コット、はじまりの夏』(2022)でアイルランドの片田舎の風景を見事に切り取った女性カメラマン:ケイト・マッカラが本作では様々な顔を持つイングランドの自然と街並みを映像に収めていますし、英国の名優:ジム・ブロードベントが満身創痍で歩み続ける主人公を悲哀的に演じています。
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