たま

ハロルド・フライのまさかの旅立ちのたまのレビュー・感想・評価

3.6
まるでお遍路さん

かつて恩があった女性から、ハロルドに手紙が届く。
その手紙はホスピスからで、死が間近だと告げていた。

返信の手紙を手に、投函しようと出かけたハロルドは、何とそのまま800キロも離れたホスピスまで歩いていこうと決意する。

列車や車で訪ねることも可能なのに、何故また歩いてなの?
なんて無謀な挑戦なの。

だけどハロルドの旅は、余命幾ばくもない友人を訪ねることだけじゃなかった。
自分自身に向き合うための巡礼だったんだ。

行き先先で出会う温かい人達や、応援する人達と出会いながらも、現れては消える過去の記憶から逃れられず、心身共に苦しみながらの旅になる。

また、ハロルドの居なくなった家に残され苛立つ妻にとっても、夫と自分自身を顧みる機会になるのだった。

この無謀とも言える旅のお陰で、感情を封印して生きてきた夫婦が、悲しみと後悔に正面から向き合い、そして夫婦の愛を再認識していく。

水晶のネックレスの、キラキラとした輝きが映画全体に降り注ぐような、清々しく爽やかな気持ちになれました。
たま

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