回想シーンでご飯3杯いける

タイタニックの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

タイタニック(1997年製作の映画)
4.3
最大150インチの映写が可能なプロジェクターを購入してから以降、過去の名作を大画面で見直す時間を設けている。大半は再レビューしていないけど、さすがにこの「タイタニック」は大画面との相性が良く、レビューしないわけにはいかない。

ミスチルの隠れた名曲「タガタメ」の冒頭に「ディカプリオの出世作なら、さっき僕が録画しておいたから」という歌詞があって、作曲された時期などから考えて、それはおそらくこの「タイタニック」の事なのだと思われる。

「タガタメ」は殺人事件に巻き込まれる少年被害者と加害者を親目線で捉えた曲で、作詞した桜井和寿は、おそらくこのタイタニックで描かれるエンターテイメント化された「死」を、その対極として持ち出したのだろうと僕は理解している。そのぐらいに、本作で描かれる死と生は、良くも悪くもドラマティックで映画的である。

1912年に沈没したタイタニック号の史実をベースに、その背景にある階級社会の構図を、客室の配置や、人数分用意されなかった救命ボートに関するエピソードで描き出す。

一方で、上流階級の娘であるローズと、貧しい画家のジャックによる、身分を越えたラブストーリーとしての魅力も見逃せない。

巨大セットを使った沈没シーンの迫力は、やはり何度観ても凄い。切り立った甲板を滑り落ちる何百人もの乗客。現代であればクリストファー・ノーラン辺りが挑戦しそうであるが、現時点で本作を超える映像はまだ現れていないのではないだろうか。同時に描かれる死に直面した人達の弱さや醜さも、スリリングな展開を更に加速させている。

その甲板で沈没まで演奏し続ける楽団のシーンに加え、もうひとつの重要な音楽シーンがあった事を、今回の鑑賞で思い出した。社交界の会食に嫌気がさしたローズとジャックが、三等客が集うフロアで、アイルランド民謡のダンスを楽しむ下りは、2人が絆を強める姿が眩しく描かれ、ここから終盤のドラマへと繋がっていくのである。

3時間超えの長尺も、同程度の尺を持つインド映画を楽しむようになった現代に於いては、さほどハードルの高さを感じず。久々の鑑賞となる今回もどっぷり楽しんだ。