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ペナルティループのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ペナルティループ(2024年製作の映画)
4.2
  いや~これは本当にビックリした。既に手垢に塗れたはずのタイムループ(タイムリープ)ものながら、まだこんなアイデアが残っていたことに驚きを禁じ得ない。最初は最愛の恋人・唯(山下リオ)を殺された岩森淳(若葉竜也)が、素性不明の男・溝口(伊勢谷友介)を何度も何度も刺し殺す場面が続くのかよと思いながら、これは陰惨な負のループだと思ったものの、監督の荒木伸二の判断は観客の私の想像力を易々と越えて見せる。そもそもタイムループものの発想というのは、何か外から不可抗力が現れてタイムループさせられる映画が大半だったように思うが、今作は岩森そのものが『ペナルティループ』の契約書にサインしてスタートする点が斬新で感心させられる。然しながら主人公の岩森は自分で選択しながらも記憶は奪われており、毎回のループの中で自分自身の記憶の欠損を埋めて行くのだ。

 ループは全部で10回、髪を切っているので最初は伊勢谷友介だとわからなかったのだが、出所後初めての映画復帰だが、率直に言ってこんな難しい役柄をよく引き受けたなと思う。犯罪者側が死刑執行人の動きを見て、少しずつ位相をずらして行く。特に驚いたのはポスターのキー・ビジュアルにもなっているカイワレ工場(?)ではなく、中盤のボウリング場のシークエンスからで、そこまでは『ボーはおそれている』に肌感が近いのだが、中盤以降はむしろ。犯罪者側と死刑執行人側とが一緒に一日を作らせている感じが、北野武の『TAKESHIS'』や是枝裕和『ワンダフルライフ』を想起させる。そう言えば『ワンダフルライフ』にも伊勢谷友介は伊勢谷友介役で出ていた。いつしか物語を演じ側にも欲が出て来て、昨日を今日が書き換える辺りの筆の走りはまだ監督2作目とは思えない充実ぶりで、低予算でありながら荒木伸二の今後にも期待したい。
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