SUN

四月になれば彼女はのSUNのレビュー・感想・評価

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)
4.1
《2024年 劇場8本目》

【2024年 鑑賞15本目】

「愛を終わらせない方法、それは何でしょう」
この問いをテーマに佐藤健演じる藤代の過去と現在の模様が交錯していく。過去に愛した森七菜演じる春と現在愛している長澤まさみ演じる弥生。本当に相手のことを分かっているのだろうか。愛し続けていたのだろうか。恋と愛の違いにもアクセスしながら淡いメッセージを持たせてストーリーが進んでいく。ストーリー自体はシンプルで言葉の数も決して多くはない。でもその一つひとつが言葉を紡いでいくよう。
森七菜の透き通った声による言葉は歌詞を読んでいるかのよう。全ての言葉を逃したくないと自然に思ってしまった。人によって感じ方は違う。考えすぎといえば考えすぎかもしれない。この問いに答えがあるわけじゃない。人によって違うのだからなおさら人が寄り添うこと、愛し続けることは難しい。それでも人は恋をする。愛し続けようとする。そこに一つの答えをこの作品は示してくれているように思える。

この作品に見入ってしまう特徴の一つはなんと言っても情景の描写。人の想いをはじめ、匂いや雰囲気など目に見えないものをフィルムカメラで切り取る森七菜演じる春。その切り取る情景が美しすぎる。プラハとウユニ、そしてアイスランド。その一つひとつのシーンの美しさに思わず魅了される。

四月は出会いと別れの季節。想いが交錯する季節。そんな四月を人はどう歩んでいくのか。藤代の前に現れる2人の女性が春と弥生という名前なのもよりその四月を強調するようなメッセージであったのかなと思う。
そして自分なりに解釈した上での藤井風の「満ちてゆく」は沁みるものがある。この作品の余韻を与えてくれる。好きな人は好きだろうという作品だと思う。自分には刺さってとても好みの作品だった。
SUN

SUN