ミゲルと仲間のトレーラーハウス、"マンナ・リンコン(海辺の片隅)"のシーンが素敵だった。ほろ酔いミゲルがガットギターで弾き語る「ライフルと愛馬」が中盤のハイライト。口笛と波音。リオ・ブラボー。
"エル・スール"も、"ミツバチのささやき"も、もう遠い記憶。しかし本作はその“記憶”そのものを呼び覚ます映画でもあった。手法として為出した劇中劇も、手垢のついたそれとは一線を画す。映画の魔法をいまなお信じ続けるエリセと劇中の演者たち。そして脳裏に焼き付いた、フェイドイン、フェイドアウトの余韻はまだしばらく続きそうだ。