シンタロー

惜春鳥のシンタローのレビュー・感想・評価

惜春鳥(1959年製作の映画)
3.8
木下惠介監督による青春群像劇。アルバイトをしながら東京の大学に通う岩垣が、2年ぶりに会津若松に帰省するのを機に集まった中学時代の同級生。東山温泉街・大滝旅館の息子で、調理場を手伝っている峯村。脚が不自由ながらも、実家で会津塗の下職をしている馬杉。質屋・桃沢の妾子で、母の店でバーテンダーをしている牧田。過酷な労働環境の町工場で働く手代木。久々に酒を呑み交わし、芸者遊びに興じ、白虎隊の墓前で剣舞を舞う。一方、牧田の家では、結核を患う叔父の英太郎が養生していた。彼には地元の芸者・みどりと駆け落ちするも、引き裂かれた過去があった…。
若山彰が歌う主題歌と、白虎隊の舞がインパクト強過ぎて、序盤はどうなる事かと思った(汗) たった2年の歳月は、互いに環境も立場も、価値観まで変えてしまうのか。変わることのない友情はあるのか。人が純粋なまま歳をとることの難しさが描かれ、痛々しくも現実味がある。5人の中で、ある人物の堕落と裏切りを巡り、それでも信じるか、許せるか、それぞれが迫られる。「友情なんて消えゆく春の雲のようなもんだよ」「世の中の荒波に揉まれてみろ。友情なんて頼りないものさ」まさに"惜春鳥"。白虎隊の悲劇と重ね合わせたかのような、さらなる悲劇も描かれ、群像劇としては良く出来ていると思いましたが、各人物描写はやや薄味な気がしました。
本作は日本初のゲイムービー?と言われているそうですが、どこが?こんな男同士のスキンシップ普通でしょう。自分の学生時代もこんなもんでしたよ。ただ、5人の中に1人、監督が意図した人物がいたのかなと、その程度の事だと思います。
配列は佐田啓二、有馬稲子主演かのようになっていますが、そんな事はなく、メインはこの5人です。「狂った果実」でデビューした津川雅彦はこれが松竹移籍後初出演作。なかなか男前で歌舞伎役者みたいな面構えですが、歳を経た癖のあるバイプレーヤーぶりを知ってしまっていると、ちょいと面白味が無い。歌手として先に成功した小坂一也。最も人が良くて優しい峯村役を好演。長く交際した十朱幸代(本作が映画デビュー)とは、早くも共演してたんですね。亡くなるまでバイプレーヤーとして活躍されてました。監督お気に入りの川津祐介は今回驚きのダークサイド。人の良い役より上手いかも?そのせいか、中年期からワルな役が多かった気がします。サービスショットはちゃんとありました。山本豊三と石濱朗は、ハンサムだけど印象薄め。最後の決闘シーンはなんとも滑稽。5人ともそれなりに好演なんですけど、佐田と有馬の芝居見てしまうと、格の違いが歴然。裏磐梯の月夜、"白虎隊"を美しく歌う佐田、華麗に舞う有馬…見目麗しさにうっとり。あまりにも素晴らしくて加点しちゃいました。何度でも見たい名場面です。
シンタロー

シンタロー