お気に入り映画だけ太郎

パラダイスの夕暮れのお気に入り映画だけ太郎のネタバレレビュー・内容・結末

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

この監督の映画は人物が無表情、酷いことばかり起こる、と聞いていたので、絶対に自分の嫌いなタイプの監督であろうと思っており、避けていた。名前を聞くと顔をしかめるくらいにはなっていた。しかし、この度スカパーで特集するというんで、とりあえず他の人の感想などを見てみた。すると、どうも考えていたような監督ではないかもしれないと思い、思い切ってこちらの作品を観てみた。

すると、見事に私の予想は裏切られた。確かにキャラクターは無表情であったのだが、何者にも媚びないという無表情では決してなく、甘ったれで人とつながろうとするけど上手く振る舞えないという不器用さゆえの無表情であると私は感じた。そして、そんなキャラクターたちには可愛さすら感じる。さて、酷いことばかり起こるということについてだが、確かにそうなのだが、それらを強調するような演出はなく、人々は悲しみに暮れることもなく、淡々と過ぎ去っていっているのだ。

また、鑑賞してみて、ユーモアセンスにとても感動した。最近よくあるユーモアセンスが欠落しており、半ば開き直っている感があるものとは異なり、抜群のユーモアセンス。めっちゃいい。面白い。

それでいて、映画的な部分もしっかりしている。

これは序盤の作品だと思うのだが、この時点で作家性が確立してる。すごい。

あと振り返って、こんなに日本人ウケする外国の映画ある?監督自身が「小津と語る」に出ていたのを観たし、作品にソニー製の家電が出てくるあたり、日本へのリスペクトがすごくあるんだろうけど。

カウリスマキ監督すごく好きになってしまった。