たく

哀れなるものたちのたくのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

男が愛すfemme fataleの話。

宣伝で可愛い衣裳と世界観、女性の解放みたいに謳っているのを聞いて新しそう!と思って観たけれど、違った。

原作も脚本も監督も男性で、プロデューサーも男性が多く、エマもプロデューサーに名を連ねていたけど、なんだかここでも良いように使われてないだろうか?あんな宣伝文句じゃなきゃ楽しめるかもなのに。

見つけた個人的な楽しみ方としては、
ベラは男の子だったけど、女の身体を得た人。これは実写版、君の名は、ですね。なんて。

諦めた中でも1番辛かったのは、母親の死が滅茶苦茶ぞんざい。選択肢を奪われた彼女に、その子どもがかけた言葉。
産みたかったとしたら?短絡的思考はベラの怪物の側面かもしれない。常に体や心に受けるだろう傷はなく、回復期間不要の好都合な生物。ベラは女では無くあくまで女児の脳の怪物であり、女児に無垢さと少女性を当たり前のように見る大人が、傷をつけても彼女の糧になるかのように接する。ベラは女児でも無垢でもなく、適切な愛情を与えられずに歳をとる哀しき怪物だと理解できる良識のある人は何人いるだろう。そして、どこもかしこも女性の老人に正義を課すのは何の溜飲を下げにきているのか。
ま、ヤバくても愛情を持って接してくれたゴッドと出会い、似た者同士この世界を好きになったみたいでよかった。ただ、ゴッド自身、受けた痛みを後身に与えてもokな人、映画は最後まで愛なのか執着なのかはわからない。

個人的には、ベラが身売りするときの口説い言い訳がうんざり。でも、まぁリアル。
現実世界のその界隈を必要とする人たちが一生懸命身売りさせようと纏わりついた亡霊みたいに見えて恐怖。後押しするための動機づけに夢とか、語らせてくる。何かの使命感を与えることで、罪悪感が減るんだと思う。どうせならここ、ヒヨらずに奔放を続けて欲しかった。もしくは、劇中で兆しがあったのだが、途中から心身を削る描写では無く、対話での知識の交流とその時間から金をもらうようなビジネスの変化?(と言えるかはわからないが…)が、あれば少しは…ただの傀儡でもない気がしたのに…人間だもの。

どれだけファンタジックに厚塗りして、絵で魅せてきても、いつまで経っても本質的な知性は見えず、資本主義的な世界と男性主権脳の父親を暴力で無力無害なヤギ脳に入れ替えて自己満足しながら庭で暮らすベラに魅力も興味も微塵も生まれなかったし、この作品の誰にも成り代わりたくないほどに哀れなるものたちばかりでした。途中の飢餓も、今本当に世界で起こっている情勢を考えると、違うはず。映画は作られた場所や年とかの背景も含めて観るものだと思っているので、倫理観が根本的に合わない映画だったんだろう。

ハウルの時から、マーク・ラファロの顔が好きなんだと気づき、何らかの演出で顔面緑色になって欲しかった。
たく

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