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哀れなるものたちのはらのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

新しいものを知って世界に色がついて、ずっといた部屋の美しさをわたしたち視聴者が初めて知るシーンが好き。水色の食堂のビジュアルがあまりにもかわいい。せっかくカラフルになった世界で自分のために黒を選んで身に纏うベラもかっこよくて素敵。

本を読むことを知り楽しい!読みたい!ってなってるベラが幼い頃の自分と重なる。だからこそ本を取り上げる行為がどれほど最悪なことなのかもわかる。
経験を糧にしていく描写の中で好きなのは、風俗店で客に思い出話をさせて言語を学ぶシーン。会えてうれチーズ。

フェミニズム映画という前情報があったのでそういう観点で見てみるとヤギの脳を移植したのはちょっと、と思うけど、ひとつの物語としてだけ見ると円環となって終わっているなと思う。元夫達との対話を諦めないでという気持ちと、アイツらは何言っても無駄だろうなという気持ちがある。
人間性の構築以前の中身幼児の段階から好きだ好きだと家に閉じ込めて結婚しようとして、現夫も結局見た目が好きなだけの性的搾取じゃないの、ともやもやしたりもしたけど、池のほとりを歩くシーンで知性を得たベラをベラそのものとして受け入れていて少し安心した。結婚しようと親子であろうと、人は誰かの所有物ではない。相手の経験を受け入れて今の相手と1:1で向き合うことの大切さ。とはいえ中身子供と知って結婚しようとするのとそれを知らず遊びで駆け落ちするのとじゃ前者の方が断然ヤバいと思う。「おもしれー女」がマジでヤバいやつなパターン珍しくておもろい。

グロテスクなシーンもホラー映画と違って目を覆いたくなるようなものはなくて、その描写によって恐怖を描きたいわけではないというのがちゃんとわかる。それはとても難しいことだと思う。例えるとエロくない裸、みたいなことで、浅草でストリップを観た時のことを思い出した。

「哀れなるものたち」って「者」だと思ってたけど、英題が出て「物事」のthingだとわかってからずっとそのことを考えてた。特定のキャラクターではなく、例えば相手を所有物として見てしまうこととか、そういう事象そのものを哀れなものとして批判しているのかなって思う。
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