Miri

哀れなるものたちのMiriのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.7
本編を観終わって、思わず小さく拍手(心のなかではスタンディングオベーション)をした。
ストーリーとしては、投身自殺を図った妊婦が解剖学者・天才外科医のゴッドによって脳死状態の妊婦の頭に胎児の脳を移植し誕生したペラ・バクスターが自分自身のアイデンティティを見つけていく物語。
かなり簡潔に書いてしまったが、いろんな要素があり、ベラ自身が“女”であることとは、自分は何者なのか、自分が決めていくというすごく清々しい気持ちにさせてくれた作品だった。
ベラが誕生したときは、男性の手により生まれてきて、手の届く範囲にいさせることによりコントロールされ続ける。まさに美しくて純真無垢でコントロールできるベラ(女)をマックスは婚約、ダンカンは駆け落ち(?)する。ダンカンとの旅の中で、ベラは性に目覚め、本に出会い、友人ができとどんどん世界を見て彼女の中の世界も広がっていく。そんな彼女をどんどんダンカンはコントロールできなくなっり彼が去ってからは彼女はセックスワーカーとして働くのだが、それがまったくunapologetic。彼女の行動すべてがunapologeticでとてつもなくかっこいい。ファッションも行動も学ぶ姿勢も全て彼女自身が自分で決めたこと。また自分の体は自分のもの。夫のアルフィーに最後ベラの生殖機能を失わせるような医療行為を行おうとするが、それがまさに男社会における”女性らしく”いてほしいという強要だなと感じた。そこからの断絶を声高に最後表現する。

個人的には航海中に出会ったハリーの現実主義で悲観的な世界の見方をしている点について、私自身色々学んだりしていく中で正直この世界の救いようのなさに絶望するときがある。だから彼の考え方には共感できた。でも心の中はベラみたいになりたいと思う。彼女みたいに勉強し続けないと。

また衣装がめちゃくちゃかわいい。すごくカラフルで形も独特なんだけどすごく可愛いし、その衣装を見るだけでも彼女の成長が表現されているのがすごい。一番好きだったのは、途中解剖学の授業に参加するときや社会主義の集会に参加するときの黒の衣装。スマートで大人っぽさがマッチしていた。

エマ・ストーンのインタビューで印象的だったのは、赤ちゃんの脳を移植された成人の人間なんていないから自分で作り上げないといけなかったと言っていた。喋り方、歩き方とか過剰だったりする可能性もあるのに全く違和感なく”ベラ”として生きていてまじですごい俳優さんだなと感じた。
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