Miri

アメリカン・フィクションのMiriのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.5
現代の商業主義・資本主義・消費主義社会によって引き起こされる人種差別を描いた本作。露骨な侮辱や無視という差別ではなく、「私は差別しない」、「多様性を重視しよう」と世間体を気にした、表層的な平等を謳った大手出版会社やメディアを皮肉っている。実際に、芸術的なものより、バズるコンテンツがお金になってしまうし世間が求めるものになってしまう。

今作は”世間求める黒人の姿”と”現実は違う”というギャップに苦しむ上流階級のアフリカ系アメリカ人作家セロニアス・”モンク”・エリソンが自棄になりゴリゴリの”ステレオタイプの黒人”のストーリーの小説を書いて、白人に大ウケし、賞レースにまでもつれ込んでしまうという物語。

ここ最近マイノリティ表象への向き合い方について多くの記事を読む。この作品における、”黒人は貧しい”というステレオタイプの描かれ方について、日本ではLGBTQ、障碍者、少数民族などの描かれ方が共通するのではないだろうか。同性愛者は悲劇的な結末を描いた作品とか、頑張る障碍者を描く作品とか。どれをとってもマジョリティに消費されてしまって、当事者が全く置き去りにされているんだよね。

一方で、Sintaraの”Life is hard”という一言も印象的だった。実際にモンクの家族も、父親の自殺、兄の自暴自棄、妹の死や母親の認知症と今まで目をそらしてきた現実が一気にのしかかってきて、最終的に世界を知り、妥協を覚えることが最後のシーンなのではと感じた。

ヒット作を生むには、世間が今何を求めているのかという鋭い視点も必要とされると思う。一方で搾取されない描き方、自分が表現したいアートをどう創作するかというのも重要だなと感じた。
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