ヤンデル

哀れなるものたちのヤンデルのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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・主人公ベラを造った博士の名ゴッドウィンは、「フランケンシュタイン」の作者メアリーシェリーの旧姓、つまり父親の名になっており、フランケンシュタインが意識されていることがわかる。

・また、それにかけてベラは博士のことを「ゴッド」と呼ぶが、これは博士がベラを創った創造主であることも思わせる。

・メアリー・シェリーは生まれてすぐ母親がなくなり、父に大事に育てられた幼少期でありながら、恋人との結婚に反対されて駆け落ちし家を出ていく。しかし後に父親にその自立心を認められる。「哀れなるものたち」はフランケンシュタインを下敷きにしつつも、メアリー・シェリーの人生をなぞるようにもなっている。

・メアリー・シェリーの父親はアナーキズム(無政府主義)を提唱した思想家ウィリアム・ゴドウィン、母親はフェミニズム運動の元祖であったメアリー・ウルストンクラフト。母親は女性の権利向上を訴える傍ら、貧しい人々に対する救済も出来うる限り行っていたという。「哀れなるものたち」ではそういった逸話を彷彿とさせるシーンも盛り込まれている。

・また、「フランケンシュタイン」に登場する怪物(実はフランケンシュタインは博士の名であり、怪物は無名)は一般的なイメージと異なり、読書をして聡明になる。また、この怪物はゲーテの「若きウェルテルの悩み」を読んで自殺を知るが、「哀れなるものたち」でも老婆がベラにゲーテを薦めるシーンがある。

・ただし、本家の「フランケンシュタイン」は怪物が知性や愛情を持っているにも関わらず、恐ろしい要望のために差別されるのに対し、ベラはその美しさゆえに男性に翻弄されていく。また、フランケンシュタインの怪物は博士に復讐しようとするが、ベラと博士は愛情深い関係性で終わる。そういった意味では「逆フランケンシュタイン」ともいえるような展開になっている。
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