ヤンデル

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのヤンデルのレビュー・感想・評価

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・マーティンがスティーブン(主人公の医師)にワキ毛を見せるように言うシーンは、マーティンがスティーブンに父生を求めているという意味がある。ボブと会話したときに、ボブはワキ毛があるが、マーティンは毛が薄い。自分の父親の心臓疾患が遺伝していないか気にする。母親とスティーブンを近づけようとする点から、スティーブンに父親になってほしかった願望がうかがえる。

・マーティンが家で見せようとするビル・マーレー主演の「恋はデジャヴ」は男が同じ日を繰り返す映画だが、そのルールの現象の理由や仕組みは説明されない。これは本作でなぜ家族が足が麻痺していくか、誰か一人を殺さないといけないかなどルールの理由が明らかにされないのと同じ状況。

・娘のキムがギリシャ神話の悲劇をレポートしていたことが明らかになるが、これは「聖なる鹿殺し」というタイトルと関係している。 古代ギリシャでアガメムノンは出陣時に風が起こらないために帆船が動かないことに気づく。これはアガメムノンが信仰の対象である聖なる鹿を誤って殺してしまったことに原因があった。どうしたら良いか巫女に聞いたところ、娘を生け贄にするように言われたので、そのとおり娘を殺して差し出したという話である。

・妻が「子供はまた作ればいい」と言ってスティーブンを誘惑したり、息子のボブが「髪を切った。僕は父さんと同じ心臓外科医になりたい」と言うのは、自分が殺される対象にならないためである。

・キムが動かない足を引きずって這って行くシーンはアンドリューワイエスの絵画「クリスティーナの世界」、妻がベットで寝そべって誘惑するシーンは「夢魔」など、絵画の構図が使われている。キムが下着でベットに座るシーンはムンクの「思春期」に似ている。

・ヨルゴス・ランティモスの父親は有名なバスケットボールプレイヤーであったが、幼少期に離婚し、子供の面倒を見なかったため、ほとんどヨルゴスは母親に育てられるが、母親も亡くなり貧しい生活を強いられている。マーティンが母子家庭で貧しい地域に住んでいることは監督自身の投影ともとれる。

・マーティンがパスタを癖のある食べ方で食べるシーンは、父親との血のつながりを感じているシーン。
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